日本の人口減少が顕著となり、今後もその傾向は続くと予測されています。人口減少が続く中で不動産投資はどのような影響を受けるのかが気になるところです。ここでは人口減少の実態と今後の予測を考慮したうえで、不動産投資にどのような影響があるのかを説明します。
日本の人口減少は止まらない!その実態とは
日本の人口減少は顕著となり、その流れは止まらないと予測されています。その実態はどうなのか、また人口減少の原因は何かと今後の動向予想を説明します。
日本は少子高齢化が進んでいる
2021年6月25日に総務省が発表した「令和2年国勢調査人口速報集計」によると、2020年の日本における総人口はおよそ1億2622万人と、5年前の1億2700万人と比べて減少となりました。また厚生労働省が9月10日に発表した「人口動態統計」によれば、2020年の出生人数は84万835人となり前年の86万5239人を下回っています。
このように日本の人口減少は顕著となっていることがわかります。さらに65歳以上の高齢者数は2021年9月15日時点の推計で3640万人と、前年比で22万人増加しています。総人口に占める割合は29.1パーセントとなり、過去最高を更新しました。
人口減少が問題となるのは、財政が悪化するためです。少子高齢化による人口減少は労働力人口の減少につながり、税収を減少させると考えられるからです。
ただし人口減少とひと口に言っても、自治体によっては人口流入がある地域があり、その反面流出が著しい地域もあります。その結果、地域経済は場所によって大きな影響が生じています。
日本で人口減少が続く原因
2020年の「人口動態統計」によると、死亡者数は前年の138万1093人より少ない137万2755人ですが、自然増減は前年のマイナス51万5854人より減少幅が増加してマイナス53万1920人となっています。さらに婚姻数も前年の59万9007組より減少し52万5507組となりました。
このような人口減少の背景にあるのは非婚化・晩婚化・晩産化による少子化が挙げられています。さらに女性の社会進出や結婚・家族に対する価値観の変化といったことも理由のひとつとして考えられます。
ほかにも出生率が低下する理由として子育てや教育にお金がかかること、男性の育児・家事に費やす時間が少ないことなども挙がっています。これに対して政府は、働き方改革などの対策を講じています。
今後の日本における人口の動向予測
国土交通省の発表によると、2050年には人口は1億192万人に、65歳以上の割合は37. 7パーセントになると推測しています。さらに国土のおよそ2割は無居住化し、これは人口規模が小さいほど顕著になる可能性があるとしています。空き家や空き地が増加し、市街地でも土地利用の需要は減少する見込みです。
対して東京圏への一極集中傾向は継続すると考えられています。若年層は東京圏に移動し地方からの転入が続くと予想されます。その一方で新型コロナウィルスの感染拡大を背景に、テレワークに対応する企業が増加していることにより地方移住への関心は高まっています。
人口減少による不動産物件の需要変化
日本での人口減少は不動産物件の需要にどのような影響を及ぼすのかを解説します。
人口減少が不動産物件に及ぼす影響
人口減少の影響の1つとして「資産デフレ」が挙げられます。土地需要の減少により地価の下落が考えられることがその要因のひとつです。
その中で都市部は資産価値が上がり郊外部では下がるという資産価値の格差が生じるという試算があります。さらに人口減少の影響で東京圏でも資産価値の格差が生じると考えられています。
2045年までに東京都心ターミナル駅まで1時間以上かかる自治体では3割以上の住宅資産価値が下落すると試算されています。その結果、高齢者は自宅を売却できず老後の居住地選択が制約されるという問題も考えられます。
不動産需要にどのような変化が生じるのか
人口減少により不動産需要も減少すると考えられますが、不動産需要には「購入需要」と「賃貸需要」があります。不動産購入需要は空き家の増加などを背景に減少が予想されますが、賃貸需要はどうなのでしょうか。
「国立社会保障・人口問題研究所」が2019年に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、東京都は2020年から2025にかけて世帯数は1. 9パーセント増加すると予測しています。さらに2025年から2030年にかけて0.8パーセント増加と、緩やかに増えると考えられています。
ほかに2020年から2025年にかけて世帯数が増加すると予測されるのは次のとおりです(カッコ内は増加率)。
- 埼玉県(1.2)
- 千葉県(0.7)
- 神奈川県(1.2)
- 愛知県(1.5)
- 滋賀県(1.1)
- 福岡県(0.7)
- 沖縄県(3.4)
このようなエリアでの賃貸需要は場所によっては人口減少の影響はさほど受けないと考えられます。
増加を続ける外国人人口
日本人の人口減少が続く中で、外国人の人口増加が続いています。2020年1月1日時点での外国人人口は287万人となり、前年比で20万人の増加、日本の総人口に占める割合は2.3パーセントと過去最高を記録しました。
都道府県別で見ると東京都が58万人ともっとも多いものの、2019年の増加率は4. 6パーセントと減少しています。それに対して地方では次の様に2019年の増加率が高くなっています(カッコ内は増加率)。
- 宮崎県(19.4)
- 沖縄県(17.4)
- 鹿児島県(16.3)
また製造業が盛んな次の地域も増加率が高まっています。
- 静岡県(8.5)
- 群馬県(6.1)
東京都で増加率が減少した理由は、就労目的の留学を制限していることによる留学生数の伸び悩みが挙げられます。対して地方では、技能実習生の受け入れを拡大している地域での外国人人口増加率が高まっています。
外国人比率の高まりによる不動産投資への影響
就労条件が厳しい外国人留学生を対象とした不動産賃貸は難しいものの、就労している技能実習生の外国人を対象とした賃貸物件は増加すると考えられます。
技能実習生の属性は高く、家賃の支払いにも問題はないと考えられることにより、外国人向けのワンルームマンション投資は有望であるとみてよいでしょう。特に増加率が上昇している地域に加えて、製造業が多い群馬県や静岡県は外国人人口の増加により賃貸需要も増えると考えられます。
今後の賃貸需要の変化
賃貸需要の変化でまずチェックすべきポイントは世帯数の増減です。晩婚化による単身者の増加も背景に、東京都や一部の地域で世帯数が増加しています。このような地域では、賃貸需要は当面のあいだは増加すると考えられます。
また地方での外国人人口の増加を背景に、外国人向け賃貸住宅の需要は増えるでしょう。特にワンルームの需要増加が見込まれます。ほかに持ち家比率が低下しているというデータもあります。特に30代から50代の持ち家比率は1988年から2018年にかけて、右肩下りで減少しています。
このことからも賃貸需要は購入需要と比べ相対的に高まると予測されます。
これからの不動産投資の見通し
人口減少と聞けば市場の縮小と需要減少という図式が浮かびます。しかし不動産投資においては、短絡的に需要の減少につながるとは考えにくい面があります。
特に不動産投資における賃貸需要は、明らかに地域によって差が生じています。人口減少のペースが遅い地域では、賃貸需要の減少率もさほど大きくはないでしょう。
さらに人口減少は世帯数減少に直結するわけではなく、地域によっては当面のあいだ増加傾向にあります。世帯数が増加すれば賃貸需要も増加すると考えられるため、不動産投資にとっては追い風となります。
さらに日本人の人口減少に対して外国人人口は増加傾向にあります。特に就労している外国人が増加する地域があり、そのような地域では外国人向けの賃貸需要が増加すると予測されます。
このように人口減少は不動産投資への逆風に直結するわけではないことがわかります。
不動産投資はより戦略的なものに
日本の人口減少はたしかに不動産投資に影響を及ぼします。空き家も増加し地域によっては過疎化も進んでいます。
しかし世帯数の推移や外国人人口の比率上昇を考慮すると、戦略的に進めることで不動産投資はまだまだ見込みがあると言えるでしょ。地域を絞り込み物件を選択することで、収益性を確保することが可能となります。
今後は高齢化による世代比率の変化も進んでいきます。それに応じて不動産需要も変化すると予測されるので、その都度戦略を練ることで対応できると考えられるでしょう。
少子高齢化を背景に日本の人口減少は今後も続く見込みですが、不動産投資にとっては必ずしも逆風とは言い切れません。地域別の世帯数の増減や外国人比率を考慮すれば、戦略を練ることで対処できます。つまり今後も不動産投資は戦略的に捉えることで、人口減少のなかでも収益を見込めると考えられます。