人口減少時代に向けた不動産投資の考え方と戦略

人口減少時代に向けた不動産投資の考え方と戦略

不動産投資の基礎知識
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日本は人口減少時代に突入しましたが、これは不動産投資にとっては向かい風になるのでしょうか。実は人口の動向を調べてみると、さまざまなデータを得られることがわかります。その人口の動向を考慮することで、不動産投資にも戦略を立てられると考えられます。

そこで今回は人口減少時代における不動産投資の考え方と、その戦略について説明します。これから不動産投資を始める方はもちろん、すでに物件を保有している方も参考になると思います。

人口減少だからといって不動産の需要がなくなるわけではない

人口減少時代になっても不動産投資において変わらないことがひとつあります。それは、「住居が必要とされる以上不動産需要は決してなくならない」ということです。

人口が減っても家は必ず必要!

人口問題研究所の試算によると、2048年の人口は1億人を割り込み9913万人になるとしています。しかし人口がどれほど減少しようとも、住む家というものは必ず必要です。

不動産投資においては賃貸需要が必要になりますが、賃貸物件の需要も一定数はあります。むしろ晩婚化が進み単身者の割合が増えることから世帯数の増加がみられ、少子化とはいえ単身者用の賃貸需要は増加することも考えられます。

また老朽化した物件は賃貸需要が減少し、人口減少が続く地域では住む人がいなくなります。つまり不動産そのものはあっても、住める物件は減少するということです。これにより、新築や築年数の新しい物件に対する需要は人口減少時代でも変わらずにあると考えられます。

人口減少が続くなかでどのような賃貸物件に需要が集まるのかを調べることも、これからの不動産投資には必要になるでしょう。

空き家の増加は否めないが、住める家は余らない?

総務省統計局が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」をみると、1988年から2018年の20年間で空き家が1.5倍に増加しているのがわかります。

2018年の空き家数は846万戸となり、全国の空き家率は13. 6パーセントとなっています。そのうち使用されていないのは347万戸ありますが、この中には倒壊の危険性がある住宅も含まれます。放置されて手入れもされていないことから、老朽化し住むことができない住宅もあります。

空室の状態の建物は劣化が進みやすく、維持管理にも体力が必要になります。
この先、空き家が増加して空室が増えると、いつ入居があるかも分からない住宅は維持管理が出来ずに『放置家屋』状態となってしまう事が想定されています。放置家屋となると、木造の場合、早くて2年、長くても5年程度で復旧が困難な状態となります。また、マンションの場合、管理組合の破綻等で丸ごと住めなくなってしまう建物が出る事も想定されています。

この事から、現在言われているほど、賃貸需要に対して供給数が余剰になる事はないと考えられます。

都市、地方を問わず一極集中へ

東京都への一極集中は2014年の「地方創生法」による取り組みなども功を奏することなく続きましたが、コロナ禍を契機に状況は変わりました。2020年4月から東京都の人口増加率は減少し、2021年3月以降は人口の流出とともに減少に転じています。

ただしこれは東京都23区からの人口流出が目立つという形になりますが、周辺の埼玉県と神奈川県ではほとんど人口転入超過数に変化は見られません。千葉県では人口転入超過数が増加していますが、東京都から流出した人口はほかの地域へと流れていったと考えられます。

一方で地方都市における道府県所在地への一極集中が加速するとみられています。たとえば2015年から2045年にかけて人口減少が予測されている札幌市の場合、札幌駅やすすきのなどが含まれる中央区だけ人口が大きく増加(10.1パーセント)すると予測されています。

ほかにも福岡市中央区(14.3パーセント)、名古屋市中区(11.4パーセント)、神戸市中央区(10.2パーセント)など2015年から2045年にかけて人口が増加する傾向があると考えられています。

人口減少時代の不動産投資における戦略

人口減少時代とはいえ、その人口の流れをつかむことで不動産投資での戦略を立てることが可能です。

エリア選択における戦略

これまでは人口が集まる地域、つまり賃貸需要が見込めるエリアの選別に次のような要素が考慮されてきました。企業、学校、巨大ショッピングモールなどが近いエリアであれば賃貸需要が見込まれ、不動産投資用の物件は魅力あるものだということです。

しかし今後はこのような要素でのエリア選択は危険だと考えられます。たとえば学校の場合、キャンパスの移転により賃貸需要は大幅に減少する可能性があります。

中央大学は多摩地区のキャンパスを2023年以降に都心部に移す予定ですし、東京理科大も地方にあるキャンパスを東京都葛飾区に移転する予定です。このように郊外のキャンパスは都心へ移転する傾向があり、これは少子化の影響と考えられています。

さらに人口の流出は企業やショッピングモールの移転にもつながると考えられることから、不動産投資はその人口の流れをつかむことが重要だと言えます。

公共交通機関で考える戦略

地方都市では人口が集中するエリアと過疎化が進むエリアとの二極化が顕著になると考えられます。そして過疎化エリアにおいては、需要減少により公共交通機関も衰退していくと予想されます。これは特に高齢化が進む地域では問題視されるとともに対策も講じられますが、採算が取れない地域の公共交通機関はいずれ衰退すると考えられるでしょう。

一方で人口が流入するエリアでは高齢者も増加し、公共交通機関の需要はさらに高まるとみられます。このように公共交通機関の整備に関する情報を入手することで、今後の人口動向がある程度は予想できます。

つまり不動産投資の面から見れば、公共交通機関が残るエリアは賃貸需要が多く見込めるため有望であると言えます。

今後の不動産投資は、戦略的な物件探しが必要になって行く

以上の様な事を考慮するとこれからの不動産投資はより戦略的に物件を探して行く必要がありそうです。

都市部と郊外における物件探し

不動産投資の物件選びは人口が多い都心で、という考え方はもはや通用しません。つまり都市部だから安心とは言えず、郊外だから難しいというわけではないということです。

東京都においても、コロナ禍を契機に人口の動向に変化が現れています。これまでは人口流入が続いてきた23区からの人口流出が目立つようになっています。その一方で、地方都市における都市部への人口集中が顕著になっています。

高齢化にともない、普段の買い物に便利であり医療機関も充実した都市部には、さらに多くの人口が集まると考えられるでしょう。一方でリモートワークの普及に伴い、便利な東京都の優位性は不動産価格の上昇もあって揺らいでいます。

このように不動産投資における物件選びは、これまでとは考え方を変える必要があると考えてよいでしょう。

安易に高利回り物件に手を出さない

物件価格が高い都心と比べると、地方都市の不動産利回りは高くなります。しかし高利回り物件にも注意は必要です。

地方都市でも一極集中の傾向が見られるように、物件価格が安いエリアからの人口流出は考えられます。これにより賃貸需要は低下し、賃貸付けが難しくなります。たとえ賃借人がついており、現況で高利回りを実現している物件であっても、安心できないということです。

また人口減少が続くエリアは物件価格が下落し、不動産投資においてはさらに利回りが高まるように見えます。しかしこれは一時的なものと考えたほうがよいでしょう。

逆に少し利回りが低くても都内や地方の人気エリアの様な長い目で見て集客が途切れそうにない物件は安定した投資が期待出来る可能性を秘めています。

知識量を増やして物件見学を

不動産投資をする上で、人口減少時代においては従来とは異なる物件探しのアプローチが必要になっています。そのためには人口流動の傾向など様々な情報と知識が求められます。基本として人口流入が見込める地域で物件を探すことが必要です。

物件を見に行く際にはその地域における人口の動向予測を立てて、さまざまなシミュレーションができるようにしておくとよいでしょう。単身者は増加しているのか、あるいは利便性を求めて高齢者が集まっているのかといった情報を加味します。

また公共交通機関が充実しているのか、あるいはこれから整備されるのかといった情報収集も必要です。そのように知識を増やすとともに、不動産投資に向いている物件の候補地を挙げて物件情報を登録しておくことがおすすめです。

人口減少時代に突入したとはいえ、地方都市においても一極集中が進んでいることがわかります。そして賃貸需要がある限り、不動産投資で収益をあげることができます。これからは人口減少にともなう情報収集と分析により、不動産投資を戦略的に行うことが重要です。そのためにも有望とみられる地域での物件情報を登録しておいて、今後のシミュレーションをしておくことがおすすめです。

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