「不動産投資にかかる税金って何があるのだろう?」
「サラリーマンだけど不動産投資をしている。節税対策になると聞いたことがあるけど、具体的なことを知りたい」
と考えたことはありませんか?
実際に、不動産投資をすることで、節税になるケースもあります。
この記事では宅地建物取引士を所有している筆者が、不動産投資に関する税金や節税対策についてお伝えします。この記事を読むと、税金のことや節税対策の仕組みなどが理解できるかと思います。不動産投資で節税することはできますが、節税を主とした不動産投資は本来の目的からはずれるので、注意が必要です。
不動産投資にかかる税金について
不動産投資にかかる税金は、大きく物件購入・物件保有中・物件売却の3つに分けることができます。それぞれ詳細にみていきましょう。
物件購入時にかかる税金
印紙税
土地や建物を購入するときには、売買契約書を取り交わしますが、契約書には必ず印紙を貼ります。建物の請負工事契約書や住宅ローン等の金銭消費貸借契約書にも印紙を貼り消印をします。これが、印紙税の納付です。
売買契約書は通常2通作成し、売主と買主が保管することになります。2通の契約書それぞれに印紙を貼らなければなりません。もし、どちらか一方の契約書に印紙を貼らなかったときは、売主と買主が連帯して納付する義務を負うことになりますので、注意が必要です。
登録免許税
土地や建物の売買をしても、それが誰の所有物になったのかは当事者にしかわかりません。そのため、不動産の所在地や面積、所有者の住所・氏名を公の登記簿に記載し、権利関係が誰にでもわかるように所有権の保存登記や移転登記をすることになります。
登記時には必ず税金を納めなければなりません。
不動産取得税
土地や建物などの不動産の所有権を取得したときに、その不動産の所在する都道府県が課する税金です。不動産取得税は取得時に一度だけ課税されます。実際の支払いは不動産を取得してから数か月後になります。
納税通知書は忘れた頃に来るため、あらかじめ準備しておきましょう。取得の原因が売買・交換・贈与・建築等のいずれであっても課税されますが、相続による取得は非課税です。
消費税
国内で、事業として消費される商品やサービスに対して課される税金が消費税です。不動産売買において、土地に対する消費税は非課税ですが、建物は消費税の対象となります。ただし売主が、課税金額1,000万円を超えている課税事業者でなければ、建物でも消費税はかかりません。
物件保有中にかかる税金
固定資産税
土地や家屋を持っている間は毎年かかる税金です。毎年1月1日現在、各市区町村に備え付けられた固定資産課税台帳にその土地、家屋の所有者として登録されている人に対して課税されます。
そのため、年の途中で不動産を売却したとしても、売主は1月1日時点の所有者であるため、その年1年分の固定資産税を納税しなくてはなりません。
そこで、不動産取引の実務上は、売買物件にかかる固定資産税を所有日数で案分して生産をするのが慣例になっています。
固定資産税は、以下の算式で計算します。
固定資産税評価額×税率1.4%
都市計画税
所有している不動産が都市計画区域内にあれば課せられる税金です。
税額の算定方法は固定資産税の場合と同じですが、標準となる税率は、1,000分の3とされています。
所得税・住民税
所得税や住民税は、不動産を賃貸して得た不動産所得に課税されます。対象となるのは総収入金額から必要経費を差し引いた部分です。
所得税は、1年間の所得に対してその年に課税されます。
住民税は、前年1月1日~12月31日までの所得に対して翌年度に課税されます。
総収入金額とは、家賃・地代・権利金・礼金・返還不要の敷金や保証金・更新料・名義書換料などが対象です。必要経費とは、固定資産税・保険料・建物等の減価償却費・借入金の利子・修繕費などがあります。また、会社からの給与をもらっている場合その所得も合算します。
物件売却時にかかる税金
譲渡所得税
物件を売却した価格から簿価を引いた残りの金額が、売却による利益となり、その利益に対して譲渡税がかかります。建物の減価償却費が大きいほど、簿価が少額になり、売却益が出やすくなります。
個人が、土地や建物を売却し、利益が生じた場合にはその利益に対して、所得税と住民税がかかります。この課税対象となる利益を、譲渡所得といいます。
土地建物を売った場合の税金は、この譲渡所得を正確に計算することから始まります。そして売却した土地建物の所有期間が5年超か5年以下かに応じた税額計算の方法によって、実際に納める税金を計算することになります。
抵当権抹消の登録免許税
抵当権抹消するには、ローンを完済していることが条件です。
ローンを完済すると自動的に抵当権はなくなりますが、登記簿謄本に記載される抵当権を抹消する手続きが必要です。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1つにつき1,000円で計算します。
土地と建物は別々に計算することになっており、土地と建物合わせて1つの不動産として計算しないようにします。
サラリーマンの不動産投資が節税対策になる仕組み
不動産投資が節税対策になる仕組みは主に2つありますので、それぞれ解説していきます。
不動産投資で経費計上できる減価償却費
不動産の減価償却とは、時間の経過とともに価値が減少していく資産の取得にかかった費用を必要経費として配分する会計処理のことです。
減価償却ができるのは、劣化が生じるものだけになり、不動産の減価償却ができるのは建物と建物付属設備だけであって、劣化しない土地は償却できません。
建物は構造により鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造に分けられます。また鉄骨造は鉄骨の厚みによっても耐用年数が異なります。
建物付属設備は、基本的な付帯設備である給排水・ガス・電気灯の設備で、これらの耐用年数は15年です。その他エレベーターや消火・排煙・災害報知設備は各々に耐用年数が定められています。この耐用年数が短ければ短いほど、年間における減価償却費が多くなります。
減価償却をいかに大きくするかが把握できれば、税引き後のキャッシュフローが増えることになり、結果的にキャッシュフローが残る賃貸経営が可能になります。
不動産所得が給与所得と損益通算できる
不動産所得の収支が赤字になってしまったら、会社からの給与所得など他の所得と相殺することができます。これを損益通算といいます。
赤字の部分だけ、不動産賃貸業を行っていなかったときよりも総所得金額が小さくなり、納めるべき所得税・住民税が小さくなるのです。
不動産賃貸業が赤字なるのは決してよいことではありません。しかし万が一、赤字が出たとしても、他からの所得が得られるサラリーマンであれば、給与所得などから赤字分が差し引かれることにより所得額が減り、所得税・住民税が軽減されます。
そこで高所得者は、不動産投資による赤字を作って節税することを考えます。
不動産投資でサラリーマンが実施できる節税対策
不動産投資をすることで、サラリーマンが実施できる節税対策が主に2つありますので、それぞれ解説していきます。
青色申告を利用できること
青色申告を利用するメリットが以下3つあります。
・青色申告特別控除
不動産所得の決算書を青色申告で作成すれば、収入から経費を引いた金額から、さらに10万円もしくは65万円の控除が可能になります。
65万円の控除には条件があり、事業的規模であることが前提です。事業的規模の基準は、原則として5棟10室です。事業的規模ではない場合の青色申告者は、最高で10万円まで控除されます。
・純損失の繰り延べ控除
不動産所得において損失が出た場合、損益通算しても控除しきれない部分の金額が生じれば、その損失額を翌年以後の3年間繰り越せます。
・青色事業専従者給与
青色事業では、家族に支払う給料についてある程度認められています。これを専従者給与といいます。
配偶者・その他の親族が生計を一にしている納税者の経営する事業に従事していれば、給与を支払うことができます。
社会通念上、適正な範囲の給与であれば、全額経費となります。
経費が使えること
不動産投資で計上できる経費は、以下のとおりです。
不動産取得税
印紙税
火災保険料
地震保険料
固定資産税
都市計画税
管理委託手数料
司法書士手数料
税理士報酬
減価償却費
修繕費
ローン金利
広告宣伝費
旅費
交通費
新聞図書費
通信費
消耗品費
接待費
市場調査費
など、さまざまな経費が使えるようになります。
節税効果が高い物件は、減価償却ができる物件
法定耐用年数の残存が短い物件ほど、年間に計上できる減価償却費が多くなります。帳簿上の利益が減ることになり、支払う税金も減ります。例えば、築古の木造だと最短4年で償却することができます。耐用年数を超えている古い物件や残耐用年数が4年未満の物件は、4年間で償却することが認められているのです。
そのため物件選びの際は、物件の構造や築年数が減価償却に大きく関わってきます。それを頭に入れて物件を選ぶことが大切です。
不動産投資で節税効果の高い人は、課税所得が高い人
不動産投資で節税効果の高い人は、課税所得が900万円を超えるサラリーマンや個人事業主です。
900万円を超えると所得税・住民税率は約33%となり、売却時にかかる譲渡税率との差が大きくなるため減らせる税金額が大きくなります。一方で、課税所得が900万円以下の人は減税できる額が少ないので節税目的ではなく、収益をしっかりと上げる物件を選んだ方がよいでしょう。
参照:国税庁
まとめ
この記事では不動産投資に関するさまざまな税金や節税対策について解説してきました。
不動産投資はサラリーマンの数少ない節税手段の一つですが、節税を目的として不動産投資を始めるのは本末転倒です。
不動産投資とは投資よりも事業性が強いです。節税をすることも大事ですが、事業としてしっかりと収益を出すことも大事です。そうして事業を順調に育てていくことが、税金とうまく付き合っていく方法だと考えます。